お金がないから離婚できない妻たち
心はとっくに離婚している。財布だけが夫婦を続けている。
夫とは、もうセックスをしたくない。
けれど、セックスはしたい。
好きな男性に触れられたい。女として見られたい。50代になったからといって、このまま妻と母親だけで終わりたくない。
彼女が話していたことを一文にすると、そういうことだった。
僕が彼女と知り合った場所は、既婚者同士が出会うマッチングアプリだ。
この時点で、顔をしかめる人もいると思う。
夫の収入に支えられた家に住み、今の生活は手放したくない。その一方で、外では恋愛とセックスを求めている。
「都合がよすぎる」
「嫌なら先に離婚しろ」
そう言いたくなる気持ちは、よく理解できる。
実際、彼女は悲劇のヒロインには見えなかった。
50代。きれいで社交的。服や美容にもお金をかけ、人生を楽しんでいる女性に見えた。
話しているうちに、僕は気づいた。
彼女は自信があるのではない。
自信があるように見せるのが、うまかった。
(個人が特定されないよう、年齢や家族に関する細部は一部ぼかしている。)
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「嫌なら離婚しろ」は、家賃を払える人の正論だ
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彼女は、夫のことを最初から嫌いだったわけではない。
一緒に家庭を作り、子どもを育ててきた。ところが、夫の浮気が何度も続いた。
問い詰め、傷つき、少し期待して、また裏切られる。怒り続けるにも、疑い続けるにも体力がいる。その繰り返しの中で、夫への気持ちは音もなく死んでいった。
夫が先に裏切ったからといって、妻が外で男性を求めることまで正しくなるわけではない。
夫が悪い。妻が悪い。不倫が悪い。
採点を続けても、彼女がなぜ夫との家へ帰るのかは見えてこない。
僕は聞いた。
「離婚したいんですか?」
「したい」
「なぜ離婚しないんですか?」
少し間を置いて、彼女は言った。
「お金かな」
子どもは大きくなっていたが、大学費用はまだかかる。離婚すれば、今の家を離れ、生活水準も下がるかもしれない。
「暮らしを小さくすればいい」は正論だ。ただ、人間は一度手に入れた暮らしを簡単には捨てられない。離婚した翌月からは、自分の名前で請求書が届く。
彼女が怖がっていたのは、夫が隣にいない朝ではなかった。
離婚した翌月から、自分で払う家賃だった。
心は、すでに家の外へ出ている。
ところが、財布だけは玄関を越えられない。
夫婦をつないでいたものは、愛情だけではなかった。
生活費だった。
夫婦は、愛情だけを煮込んだきれいなスープではない。
住宅ローン
教育費
老後
世間体
いろいろな具材が入った鍋だ。何が主役かは、ふたを開けるまで見えない。
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約30人の妻が、全員同じことを言った
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僕が直接話した範囲で、同じように離婚を考えている40代、50代の女性が約30人いた。
専業主婦
パート
会社員
自営業者
全員に子どもがいた。多くの人が、生活の大部分を夫の収入に頼っていた。
これは統計ではない。SNSや既婚者向けアプリなど、夫婦関係に悩む人と出会いやすい場所で聞いた話であり、当然偏りはある。
「日本の妻はみんな離婚したがっている」と言うつもりもない。
その約30人に、僕は同じことを聞いた。
「自分に経済力があれば、離婚しますか?」
全員が、同じ趣旨の答えを返した。
「する」
約30人が同じことを言えば、僕には社会のひび割れに見える。
30回も同じ答えを聞けば、さすがに鈍い僕も「これは偶然ではない」と気づく。
しかも、会社員、国家資格者、自営業者もいた。
働いていても、自分と子どもの生活を一人で支える未来が見えなければ、人は動けない。
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妻は、本当に「夫の金」で暮らしているのか
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「夫の金で暮らしているくせに」と責めるのは簡単だ。
夫が仕事に集中できたのは、妻が家事や育児、親の介護を担ってきたからかもしれない。夫の給与明細に、妻の家事代や育児代は書かれていない。
一方で、家庭にどれだけ貢献してきたとしても、離婚後に毎月自分で生み出せる収入がなければ、不安は消えない。
家事や育児を一人で背負った人も、働くことを止められた人もいる。あなたが悪いとは言わない。
ただ、誰かに責任を押しつけても、来月の収入は増えない。
これからの人生の決裁印まで、嫌いな夫に持たせ続ける必要はない。
過去の責任まで背負わなくていい。
これからの選択権だけは、自分の財布へ取り戻そう。
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僕は、2,000万円を失って知った
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僕自身、約2,000万円の負債を抱え、自己破産した経験がある。
約2,000万円を失った男がお金を語る。説得力の方向は少し怪しい。反面教師としての迫力だけは、かなりあると思う。
お金がなくなると、選択肢は驚くほど狭くなる。
行きたい場所へ行けない。失敗から立て直す余白がないから、新しい挑戦にも慎重になる。
お金は自由そのものではない。愛情も、失った時間も買い戻せない。ただ、お金があれば解決する問題はかなり多い。
お金で幸せは買えない。
一方で、お金がないために選べない不幸は、確実にある。
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50歳で「私には何もない」は、自分の人生に失礼だ
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離婚したい女性たちへ「何で稼ぐ予定ですか?」と聞くと、多くの人が言葉に詰まった。
自分には売れるものがない
何から始めればいいか見えない
失敗も怖い
僕には、そこが不思議だった。彼女たちに能力がないとは思えなかったからだ。
看護師、薬剤師、歯科衛生士、理学療法士。国家資格を持つ女性もいる。
資格がなくても、次のような経験がある。
会社員経験
育児
介護
人間関係での失敗
薬剤師なら、高齢者の服薬後の生活支援や介護家族のお薬整理に旗を立てられる。資格がない人にも、20年の育児や介護で身につけた知恵がある。
もちろん、経験を並べただけで商品になるわけではない。
誰の、どんな悩みを、どのような方法で解決するのか。実際に提供し、反応を見ながら磨いていく。
足りないのは人生経験ではない。
自分の経験を、誰かがお金を払う形へ翻訳する設計だ。
何もない50歳など、ほとんどいない。
50年生きて、本当に何もないとしたら、その無傷の生存術だけで講座が一つ作れそうだ。
持っているものに、まだ値札がついていないだけだ。
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逃走資金から始まる実業があってもいい
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月3万円:小さな余白が生まれる
月10万円:暮らしに大きな余白が生まれる
月30万円:「自分一人で暮らせるかもしれない」という現実味が生まれる
三万円で離婚は難しくても、自分で稼いだ三万円は、玄関の鍵を少し軽くする。
月三十万円は、僕が経済的自立を考えるときに置いている一つの目安だ。
必要額は家庭によって違う。すべての人が短期間でそこへ届くとは限らない。
ただ、40年、50年の経験を誰かの問題を解決する形へ変え、販売と改善を続ければ、目指せる人は決して少なくない。
目指す理由は立派でなくていい。
夫から離れたい
好きな男性と生きたい
自分の美容代を誰にも頼まず払いたい
離婚後の家賃を貯めたい
それで十分だ。
逃げるために始めた仕事が、続けるうちに誰かの役に立ち、その人の生活まで豊かにする仕組みへ育つことがある。
僕は、それを単なる副業ではなく、実業と呼びたい。
逃走資金として始めた仕事が、いつか誰かを救う実業に育つこともある。
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稼げる妻ほど、離婚するとは限らない
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ここまで読めば、僕が離婚する女性を増やしたいように見えるかもしれない。
話は、そんなに単純ではない。
ここで、先ほどの約30人と同じ立場の女性としてではなく、経済的に自立している一つの例として、僕の知る45歳の女性を紹介したい。
彼女は、会社員から美容医療クリニックのコンサルタントへ転じた。
具体的な収入額は聞いていない。ただ、夫に経済的にも精神的にも依存せず、今も結婚生活を続けている。
彼女が離婚しない理由は決めつけられない。
ただ、「女性が稼げば離婚する」という単純な話ではないことは見える。
必要なら家を出られると思えるから、夫に言いたいことを言える。相手にしがみつく必要がないから、相手の意見を聞く余白も生まれる。
お金に強制されて続ける結婚と、離れる力を持つ二人が今日も一緒にいる結婚は、中身が違う。
お金でつながっていた夫婦を、意思でつながる夫婦へ作り直すこともある。
鍵を持った妻は、必ず檻から逃げるわけではない。
鍵があるから、そこを自分の家として選び直せることもある。
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離婚届より先に、自分の人生へ署名しよう
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僕は、離婚を勧めたいわけではない。結婚を守れと言うつもりもない。
子どものために結婚を続ける
経済力を得たあと、改めて夫を選ぶ
離婚して自由になる
どの道にも、他人が一つの正解を押しつける必要はない。
不倫を肯定するつもりもない。批判する自由も、僕が見た現実を書く自由もある。
自分の人生を、お金がないという理由だけで諦めないでほしい。
暴力、脅迫、過度な監視など、身の危険がある場合は、収入づくりより先に行政や専門機関へ助けを求めてほしい。安全の確保が最優先だ。
そのうえで、経験、資格、失敗、欲を机に並べよう。
誰の問題を解決するのか
最初に何を提供するのか
90日間で何を試すのか
今日、自分で稼ぐ一本目の細い道を引けばいい。
稼ぐとは、夫に勝つことではない。
離婚することが、成功とは限らない。
自立とは、一人で生きることではない。
この人と生きる。
この人とは生きない。
その両方を、自分で選べることだ。



よしなりさーん、おはスタスタ🌷これ、ものすっごく共感します。経済的な理由で離れるべきから離れられない人がきっとたくさんいると思います。離婚するかどうかは別として、離婚できる自分にしておくってとても大きなことですよね。お金のせいで選択肢が狭まるのは事実。自分の幸せを掴むために必要な経済力は女性こそ持ち合わせておくべきですね✨️『離婚届より先に自分の人生に署名しておく』なんて、またまた秀逸な表現すぎます🥰
「嫌なら離婚しろ」は、たしかに家賃を払える側の言葉ですね。夫婦の問題を感情だけで裁こうとすると、請求書が机の下に落ちます。この記事はそこを拾っている感じがしました。
「離婚できる自分になる」という締め方も、乱暴なようでいて、かなり優しいです。