世の中からダイエットがなくならない理由
痩せ方はもう足りている。足りないのは、クロワッサン30個に負けない環境だ。
火曜日の深夜。
YouTubeの撮影を終え、仲間と散歩をしたあと、僕は松屋、すき家、丸源ラーメン、大戸屋のどこかへ向かう。
大戸屋を選んだ日は、少しだけ自分を褒めたい。
問題は、丸源ラーメンを選んだ日だ。
ラーメン、餃子、チャーハンのセットを注文する。ラーメンを食べたあと、そのスープへチャーハンを投入する。
スープをたっぷり吸ったチャーハンを、最後まで食べる。
うまい。
恐ろしく、うまい。
痩せる原理なら知っている。
これは、どう考えても痩せる人間の食べ方ではない。
知識は「やめておけ」と言っている。
口は「チャーハンを入れろ」と命令してくる。
そして僕は、入れる。
世の中からダイエットがなくならない理由は、おそらく、このラーメンのスープの中に沈んでいる。
48年間、「今度こそ痩せる」が売られ続けてきた
僕は現在48歳だ。
僕が生まれてから今日まで、「ダイエット」という言葉が世の中から消えた記憶は一度もない。
朝バナナダイエット。
リンゴダイエット。
糖質制限。
置き換え食品。
脂肪燃焼サプリ。
腹に巻いて電気を流すアブトロニックのような器具。
YouTubeを開けば、「これを食べれば痩せる」「寝る前にこれをやれば痩せる」「1日5分でお腹がへこむ」という動画が無限に流れてくる。
まるで毎年、新しい痩せ方が発見されているようだ。
これだけ多くの方法が人を痩せさせ、痩せた状態まで維持させているなら、そろそろダイエット業界は仕事を失ってもよさそうなものだ。
現実は正反対。
新しい方法が登場し、売れ、忘れられ、名前や形を変えて再び登場する。
商品は変わる。
人間の欲は変わらない。
「食べ方を見直し、体を動かし、それを長く続けましょう」
そんな地味な話より、
「これを食べれば痩せます」
と言われた方が、僕たちは財布を開きたくなる。
42歳。僕の体に、知らない腹がついていた
僕が一番太っていたのは、42歳ごろだった。
身長166cm、体重約65kg。
数字だけなら、深刻に見えないかもしれない。
鏡を見た僕は驚いた。
「お腹って、こんなに出るの?」
自分の体なのに、誰かが知らない腹を取り付けたようだった。
顔も丸くなり、以前より老けて見えた。
僕が痩せたい理由には健康もある。体形を保ち、老化にも抵抗したい。
そして、もう少し俗っぽい本音がある。
モテたい。
おっさんに見られたくない。
鏡に映った自分を好きでいたい。
「健康のためです」と上品にまとめるだけでは、僕の本音は半分しか伝わらない。
健康でいたい。
若く見られたい。
まだモテたい。
全部、僕を動かす理由だ。
5日間食べなくても、クロワッサンには負ける
僕が本格的に試したダイエットらしいものは、ファスティングだった。
数日間の準備食から始め、酵素ドリンクを飲みながら5日間食事を断ち、その後も数日かけて回復食へ戻した。
最初は空腹を感じた。途中から、食べないことが普通になった。
現在の体重は約59kg。目標は55kgだ。
ファスティングだけで今の体重になったわけではない。
食べすぎない。
一人でいる時は、あまり食べない。
毎日歩く。
毎日、体重計に乗る。
ジムの風呂へ行った時には、大きな鏡で自分の体を見る。
仕事へ集中すると、食事を忘れることもある。
僕を65kgから59kgへ連れてきたのは、何か一つの食品ではない。
食事、仕事、歩く習慣、体重計、鏡。
生活全体だった。
ここまで読むと、僕が自己管理のできた立派な男に見えるかもしれない。
安心してほしい。
フォルクスへ行けば、食べ放題のクロワッサンを一度に20個から30個食べる。
小さなクロワッサンは危険だ。
一個が小さいため、僕の頭の中では何個食べても「大した量ではない」という謎の会計処理が行われる。
5個食べる。
まだ小さい。
10個食べる。
一つひとつは小さい。
20個食べる。
皿を取りに行く回数が増えただけだ。
30個近く食べた頃、クロワッサンたちが腹の中で労働組合を結成する。
僕は、食べれば体重が増える可能性を知っている。
知っていても食べる。
仲間との飲み会では食べる。
楽しい食事会でも食べる。
深夜の丸源ラーメンでは、チャーハンをスープへ沈める。
知識が負けたのではない。
その場の楽しさが勝ったのだ。
ここでファスティングを勧めたいわけではない。体調や持病、服薬状況によっては危険を伴うため、実践を考える人は医療専門家へ相談してほしい。あくまで僕個人の経験として書いている。
ダイエット法がなくならないのは、何一つ効かないからではない
最初、僕はこう考えていた。
これほどダイエット法が次々に生まれるのは、結局、何一つ効かないからではないか。
少し違う。
食事法、運動、記録、食品、器具。生活を変えるきっかけとして役立つものはある。
問題は、一つの商品を買っただけで、その人の生活全体が自動的に変わるわけではないことだ。
長期的な体重は、摂取と消費のエネルギーバランスだけではなく、食欲、睡眠、代謝、遺伝、食行動、人間関係、健康的な食品へのアクセス、市場、生活環境など、いくつもの要素に左右される。
WHOも肥満を、遺伝、神経生物学、食行動、市場の力、より広い環境などが複雑に関係する、慢性的で再発しやすい状態として説明している。WHO「Obesity and overweight」
「本人の意志が弱い」で終わらせるのは簡単だ。
人間の意志など、焼きたてのクロワッサンを前にすれば、かなり頼りない。
必要なのは、強い意志を持ち続けることではない。
意志が弱い日にも、元の行動へ戻れる仕組みだ。
資本主義は「痩せ方」より「今度こそ」を売っている
ダイエット業界には、人を惑わせている部分があると僕は思う。
本当は効果が限られているのに、まるでそれ一つですべてが解決するように見せる。
「飲むだけ」
「巻くだけ」
「食べるだけ」
「寝る前に一回だけ」
この「だけ」が売れる。
人間は、今の生活をほとんど変えずに、結果だけ変えたいからだ。
この商品を買った自分。
今日から変わる自分。
今度こそ続けられる自分。
ダイエット業界が売っているのは、商品だけではない。
「今度こそ」という気分だ。
一方、業界だけを悪者にすれば、この記事もありきたりになる。
僕たち買い手も、魔法を欲しがっている。
「生活を地道に整えてください」より、「これさえ買えば変わります」と言われたい。
売る側が魔法を作り、買う側が魔法を求める。
この共同作業によって、ダイエット市場は何度でも生まれ変わる。
世の中からダイエットがなくならないのは、答えが見つかっていないからではない。
答えが地味すぎて、僕たちが何度も新しい答えを欲しがるからだ。
僕も「これを食べたら痩せた」と言った
ここで僕だけ、高い場所から業界へ石を投げるつもりはない。
僕自身、YouTubeで「これを食べたら痩せた」という見せ方を使ったことがある。
95%の高カカオチョコレートだ。
僕の場合、非常に苦くて食欲が落ちた。その個人的な体験を動画にした。
「高カカオチョコレートと食欲の関係を考えます」
こう言うより、
「これを食べたら痩せた」
の方が見たくなる。
正しい内容を用意するだけでは、人は動かない。
タイトル、サムネイル、言葉の選び方によって、同じ内容でも入口は大きく変わる。
これはダイエット業界だけの話ではない。
YouTubeも、Substackも、あらゆる実業も同じだ。
人は原理から入ってこない。
欲から入ってくる。
痩せたい。
若く見られたい。
モテたい。
楽をしたい。
この欲を否定する必要はない。
入口は欲望でいい。
問われるのは、その奥に何を置くかだ。
僕が売るなら、痩せ方ではなく「逃げにくい場所」を売る
もし僕がダイエットの実業を作るなら、新しい痩せ方は発明しない。
オンラインの「ダイエット道場」を作る。
参加者は毎日、体重計に乗る。
その日の体重と、前日から何kg増えたか、何kg減ったかを仲間同士で共有する。
増えた日は、少し恥ずかしい。
クロワッサンを30個食べた翌朝には、報告ボタンの上で指が固まるかもしれない。
少しスパルタだ。
目的は、誰かを辱めることではない。
都合の悪い現実から目をそらしにくくすることだ。
体重だけで人を採点しない。病気や摂食障害など、専門的な支援が必要な人を根性論で追い込まない。その線引きも、提供者の責任だ。
昨日食べすぎても、今日から戻る。
一週間姿を消しても、また道場へ帰ってくる。
体重を記録する。
変化を見えるようにする。
継続的なフィードバックを受ける。
仲間と支え合う。
こうした要素は、公的な体重管理情報でも、継続を支えるプログラムの構成要素として挙げられている。米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所「Choosing a Safe and Successful Weight-loss Program」
痩せる情報は、すでにあふれている。
足りないのは、昨日の自分を確認する場所だ。
崩れた時に戻る場所だ。
一人では負ける夜を、誰かと越える仕組みだ。
夢を実業に変える人が、ダイエット業界から学べること
これは、ダイエットだけの話ではない。
英語教材を売る。
資格講座を売る。
筋トレ動画を売る。
AIの使い方を売る。
起業ノウハウを売る。
商品を渡した瞬間、提供者は「価値を渡した」と考えやすい。
受け取った人が使わず、結果が出なければ、「本人が行動しなかったから」と言える。
確かに、最後に行動するのは本人だ。
提供者が代わりに痩せたり、英語を覚えたり、実業を作ったりするわけではない。
本当に結果を出してほしいなら、商品を渡した先まで設計した方がいい。
売れる実業には、三つの層がある。
1.欲望から入ってもらう
「痩せたい」「稼ぎたい」「若く見られたい」
人がすでに持っている欲を、入口にする。
2.奥には本物の原理を置く
耳触りのよい魔法だけを並べず、結果に必要なことを正直に伝える。
3.続けられる場所を作る
進捗が見える。
仲間がいる。
助言が届く。
失敗しても戻れる。
この三つ目まで作って、初めて「方法」が「実業」へ変わる。
情報を売るだけなら、今はAIにも作れる。
人が行動し、止まり、戻り、結果へ近づく環境は、人間が本気で設計する価値がある。
売れる人は、人間の欲を知っている。
長く愛される人は、買った人のその後まで考えている。
実業とは、人間の弱さが前提の仕組みである
僕は明日も体重計に乗る。
ジムの鏡で、お腹を見る。
火曜日の深夜になれば、丸源ラーメンと大戸屋の間で心が揺れる。
人間は、知識だけでは変わらない。
意志だけにも任せられない。
だからこそ、実業が生まれる。
新しい魔法を作る必要はない。
人が地味な原理を続けられるように、面白く、楽しく、少し逃げにくい場所を作ればいい。
世の中からダイエットがなくならないのは、人間が愚かだからではない。
人間が、焼きたてのクロワッサンを前にすると弱いからだ。
実業とは、その弱さにつけ込んで魔法を売ることではない。
弱い人間が、それでも前へ進める環境を作ることだ。
追伸
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「これ、自分の夢や経験も仕事になるのかな」
と思った方は、詳しくはこちらのnoteをご覧ください。
村長が、あなたの中にある仕事の種を一緒に見ます。
※スマホでうまく開けない場合は、リンク部分を長押ししてみてください。



よしなりさん、おはようございます。
クロワッサン、私も大好きなので、たま〜食べるようにしています。
美味しいですよね。
もう30年以上、ダイエットし続けて体重をキープしている私です^^
面白くて学べる記事をありがとうございます!
今日も、ニコニコ笑顔で、楽しむ1日を〜〜🎶
クロワッサンは飲み物です🥐🥹💓