司法書士試験に一発合格した。人生の問題は解けなかった
法律を知っていた僕が、約2,000万円の自己破産を経験して気づいた「頭の良さ」と「知恵」の違い
僕は司法書士試験に一発で合格した。
その後、約2,000万円の自己破産を経験した。
法律を知っていた男が、最後には法律に救われる側へ回った。
なかなか皮肉な話である。
司法書士試験の前には、旧司法試験を約7年間勉強している。
法律の問題なら、事実を整理し、条文を探し、選択肢を比べる。正解には丸がつき、間違いにはバツがつく。
長く勉強しているうちに、僕は「よく考えれば、人生にも正解がある」と思うようになっていた。
現実は、そんなに親切ではなかった。
人生の大事な問題には、模範解答も採点者もいない。
そして僕は、試験には一発で合格したのに、自分の人生では大きな不正解を選んだ。
試験に強いことと、人生の判断に強いことは、まったく別だった。
1,283万円を入れる前に、なぜ調べ切らなかったのか
自己破産へつながった大きな原因の一つが、短期投資に入れた1,283万円だった。
今振り返れば、確認すべきことはいくつもあった。
どのような仕組みで利益が生まれるのか。
誰が管理しているのか。
その説明を裏づける資料はあるのか。
最悪の場合、どこまで失うのか。
疑問を一つずつ、自分の手で調べるべきだった。
僕はそれを徹底しなかった。
疑問の穴を、自分の調査ではなく、他人の説明で埋めてしまった。
法律を知らなかったわけではない。
調べる能力はあった。
問題は、「自分が知らない」と認め、調査を続ける姿勢を失ったことだった。
知識不足ではない。
知識の使い方を間違えたのだ。
頭のいい人ほど、自分を説得するのがうまい
デビッド・ロブソンの著書『知性の罠』は、なぜ高いIQ、学歴、専門知識を持つ人が、驚くほど愚かな判断をするのかを扱っている。
この本の主張を、僕なりに一言でまとめる。
頭の良さと、判断の良さは別物である。
知識が多い人は、必ずしも真実へ近づくとは限らない。
自分が信じたい結論を守るために、その知識を使うことがある。
都合のいい証拠を集め、不都合な事実には理由をつけ、最後には自分自身へ無罪判決を出す。
頭が「裁判官」ではなく、「自分専属の弁護士」になるのだ。
頭の回転が速い人ほど、間違った結論にも立派な説明をつけられる。
つまり、頭がいい人は他人を説得する前に、まず自分を説得してしまう。
これが、知性の罠である。
法律の知識が、僕を守ってくれなかった理由
法律の知識は、「何が違法か」「どんな手続きが必要か」を教えてくれる。
しかし、「この人物を信用するべきか」「この話から離れるべきか」までは決めてくれない。
知識は、使う人の目的に従う。
真実を確かめるために使えば、矛盾を見つける道具になる。
自分を安心させるために使えば、不安を黙らせる言い訳になる。
頭の良さは、車のエンジンに似ている。
高性能なエンジンなら、遠くまで速く走れる。進む方向を間違えれば、ものすごい速さで崖へ向かう。
必要なのは馬力だけではない。
ハンドルとブレーキ、そして「道を間違えた」と認める勇気である。
人生には、用意された正解がない
資格試験では、用意された選択肢の中に正解がある。
人生では、選択肢そのものが間違っていることがある。
AかBかで悩んでいたら、答えは「どちらも選ばない」かもしれない。
進むか、戻るかで迷っていたら、「一度立ち止まって調べる」が正解かもしれない。
僕たちは学校で、出された問題を解く訓練は受けてきた。
その問題自体が正しいのかを疑う訓練は、あまり受けていない。
だから頭のいい人ほど、間違った問題を一生懸命に解き続ける。
解き方は見事なのに、人生は少しも良くならない。
答案用紙では満点。現実では赤点。
そんなことが起きる。
自分をだまさないために決めた三つのこと
自己破産を経験してから、僕は判断するときに次の三つを意識している。
1.疑わしい点は、自分で調べ切る
詳しい人へ相談することと、判断を丸投げすることは違う。
最後に責任を負うのは自分だ。疑問が残るなら、納得するまで自分で確認する。
2.何が起きたら考えを変えるのか、先に決める
お金や時間を使った後では、間違いを認めるほど痛みが大きくなる。
どの数字が崩れたら止めるのか。どんな事実が出たら撤退するのか。始める前に決めておく。
3.自分が信じたがっている話ほど疑う
聞いてうれしい話、安心する話、得をする話ほど、頭は簡単に味方する。
そんなときこそ、自分とは反対の立場から証拠を見る。
「この話が嘘だとしたら、どこに兆候があるか」
そう問い直す。
本当に賢い人は、いつも正解する人ではない。
自分の間違いに気づいた瞬間、昨日までの答えを消して、今日の答えを書き直せる人だ。
司法書士の合格は、用意された問題に正解できた証明である。
一方、自己破産は、僕が正しい問題を立てられなかった証明である。
どちらも、僕の人生だ。
一方の事実が、もう一方を消してくれることはない。
だからこそ、今はこう思っている。
資格証は、壁に飾ればいい。
「自分は正しい」まで、額に入れる必要はない。
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