フォロワー約10万人。僕は、人が動く理由を勘違いしていた。
『ストーリーテリングの科学』で知った、経験を発信・商品・実業へ変える5つの質問
人を集めれば、人は動く。
僕は、そう思っていた。
僕はこれまで、複数のYouTubeチャンネルを運営してきた。登録者は累計で約34万人。現在のメインチャンネルは約8.6万人。Xにも約10万人のフォロワーがいる。
数字だけを見れば、僕は小さな国の王様である。
ところが、国民の多くは王様の演説を聞かず、隣の国で猫の動画を見ていた。
少し寂しい。
そして、かなり勉強になった。
僕は長い間、数字が大きいほど人に届き、信頼され、実業にもつながると思っていた。
フォロワーが増える。
登録者が増える。
再生回数が増える。
数字が増えるたびに、前へ進んでいる気がした。
ところがSubstackで文章を書き始めて、気づいた。
人を集めることと、人を動かすことは違う。
十万人の通行人より、毎回立ち止まって話を聞いてくれる百人の方が、実業を作ってくれることがある。
僕が欲しかったのは、大きな数字だった。
本当に必要だったのは、信頼して読み続けてくれる人だった。
そんなことを考えているとき、ウィル・ストーの『ストーリーテリングの科学――脳と心をひきつける物語の仕組み』を読んだ。
これは、文章をうまく書くためだけの本ではない。
人は、なぜ話の続きを知りたくなるのか。
なぜ正しい説明より、誰かの失敗談を覚えているのか。
なぜ同じ商品でも、売れる人と売れない人がいるのか。
その仕組みを、脳と心の働きから解き明かした本だ。
読みながら思った。
これは作家だけの本ではない。
夢を実業に変えたい人にこそ必要な本だ。
人は、情報ではなく「変化」に振り向く
物語は、何かが変わった瞬間から始まる。
毎朝7時に目覚まし時計が鳴っても、物語にはなりにくい。
毎朝鳴る目覚まし時計が、今日だけ鳴らなかった。
この瞬間、人は「なぜ?」と思う。
いつもの人から返信が来ない。
順調だった売上が突然落ちる。
一万人集めたのに、誰も商品を買わない。
脳は、いつもと同じものを省略する。
そして、予想から外れたものに注意を向ける。
発信も同じだ。
「今日はマーケティングについて解説します」
これでは、脳は昼寝を始める。
「フォロワーが一万人を超えた夜、数字ほどには文章が読まれていないことに気づいた」
こちらには変化がある。
何が起きたのか。
なぜ、そうなったのか。
この人は、次に何をするのか。
読者の頭の中に、三つの疑問が生まれる。
知識を教える前に、変化を見せる。
それだけで、説明が物語へ変わる。
人生を遠回りさせるのは、美しい思い込みである
本書の中で、特に面白かったのが「神聖なる欠点」という考え方だった。
言葉は難しそうだが、意味は簡単だ。
本人が正しいと信じている、少し間違ったルールである。
「弱みを見せたら負け」
「数字が大きいほど成功」
「努力を続ければ、いつか必ず報われる」
本人にとっては悪い考えではない。
自分を守り、ここまで連れてきてくれた大切なルールだ。
だから、なかなか手放せない。
僕にもあった。
僕は旧司法試験を7年間勉強して、合格しなかった。
その後、司法書士試験には一発で合格した。
旧司法試験を勉強していたころの僕は、「努力を続ければ、いつか報われる」と信じる、努力教の熱心な信者だった。
お布施は、7年分の時間である。
努力することは悪くない。
方向を疑わない努力が危ない。
穴を掘る方向を間違えていても、汗をかいている本人には、ものすごく前進しているように感じられる。
人生を遠回りさせるのは、明らかに悪い考えとは限らない。
美しくて、正しそうな考えほど手放しにくい。
物語が動くのは、主人公が自分の正しさに裏切られたときだ。
人生や実業が動くのも、同じ瞬間である。
専門家ほど、商品の自己紹介が長くなる
専門知識を持つ人ほど、説明したくなる。
理論、資格、実績、機能、成分、学んできた歴史。
聞いてもいない幼少期まで話し始めそうな勢いである。
お客さんは採用担当者ではない。
商品の履歴書を読みたいわけではない。
知りたいのは、もっと簡単なことだ。
「これは、私の何を変えてくれるのか」
健康法を買う人が欲しいのは、健康法の説明ではない。
朝、軽い体で起きられる未来だ。
文章講座を買う人が欲しいのは、文章の知識ではない。
自分の言葉で、誰かの心を動かせる未来だ。
ビジネス講座を買う人が欲しいのは、立派な教材ではない。
自分の経験が人の役に立ち、収入にも変わる未来だ。
夢を実業に変えるプロモーターとして、僕が見るのは、商品の立派さだけではない。
その商品によって、誰が、どこから、どこへ移動するのか。
商品は主役ではない。
川を渡るための橋である。
主役は、橋を渡る人だ。
正しい商品より、必要とされる商品を作る
僕はこれまで、健康・美容分野を中心に約3,000本のコンテンツを発信し、専門家の商品設計や販売導線づくりにも関わってきた。
そこで何度も感じたことがある。
専門家が売りたいものと、お客さんが欲しいものは、同じとは限らない。
専門家は知識を売ろうとする。
お客さんは変化を買おうとする。
このズレに気づかないまま商品を作ると、内容は立派なのに売れない。
商品がない人ほど、まず三人に話を聞いた方がいい。
一人で企画会議をすると、毎回満場一致になる。
参加者は自分一人。
反対意見はゼロ。
会議は極めて平和だ。
そして商品を出した瞬間、市場から否決される。
会議にお客さんを呼び忘れているからだ。
三人に聞く。
何に困っているのか。
何を試してきたのか。
なぜ、うまくいかなかったのか。
どんな未来なら、お金を払っても欲しいのか。
そこで使われた言葉が、発信の言葉になる。
何度も出てきた悩みが、商品の種になる。
売れなかったときも、才能不足と決める必要はない。
市場から届いた赤ペンだと思えばいい。
赤ペンには、次に直す場所が書いてある。
物語を実業へ変える5つの質問
自分の経験や専門性を実業へ変えたいなら、最初に次の五つを書き出してみてほしい。
1.何が変わったのか
失敗、退職、出会い、年齢、違和感。
今までの生き方を続けられなくなった瞬間は、どこだったのか。
2.誰が困っているのか
「みんな」ではなく、一人まで絞る。
三年前の自分でもいい。
3.何を正しいと信じていたのか
うまくいかなかった方法だけでなく、なぜそれを正しいと思ったのかを見る。
4.何を選び直したのか
何を学んだかより、何をやめ、何を始めたかを書く。
5.変化を示す証拠は何か
売上、返信、表情、習慣、誰かの言葉。
大成功である必要はない。最初の自分には取れなかった行動が、強い証拠になる。
この五つが見つかると、ただの経験が発信になる。
発信が企画になる。
企画が商品になる。
商品を通じて仲間やお客さんとつながり、継続する実業になる。
夢は、頭の中に置かれている間は展示品だ。
誰かの困りごととつながった瞬間、実業になり始める。
8.6万人を守るか、新しい未来を選ぶか
僕は最近、登録者約8.6万人のYouTubeチャンネルを、40歳以上の若返り・健康・美容という方向へ変えた。
これまでの発信経験とも、今の自分の関心ともつながるテーマだ。
その一方で、方向転換には怖さがあった。
8.6万人は資産である。
同時に「昔のままでいてください」と迫ってくる、かなり人数の多い親戚でもある。
過去の視聴者に合わせ続ければ、数字は安定するかもしれない。
その代わり、これから本気で話したいことが死んでいく。
昔の数字を守るか。
新しい未来を選ぶか。
僕は後者を選んだ。
物語のクライマックスとは、建物が爆発する場面ではない。
古い自分と新しい未来を並べられ、どちらかを選ばなければならない瞬間だ。
実業も同じである。
過去の成功を守り続けるか。
今の違和感を、新しい発信や商品に変えるか。
選んだ瞬間に、次の物語が始まる。
AI時代に売れるのは、正解より「選び直した証拠」
毎日AIと話している僕が言う。
知識の量や答える速さで、人間がAIと勝負する必要はない。
AIは寝不足にならない。
二日酔いもしない。
七年間同じ試験を勉強して、あとから遠回りだったと気づくこともない。
正しい情報は、これからますます早く、安く手に入る。
その一方で、価値が上がるものがある。
自分で試したこと。
予想が外れたこと。
恥をかいたこと。
考えを変えたこと。
選び直したこと。
そして、その過程を自分の言葉で話せること。
完璧な人は、立派な参考書になる。
少し壊れた人は、忘れられない物語になる。
僕は、賢いだけの文章を書きたいとは思わない。
生きている感じのする文章を書きたい。
夢を実業に変えるために必要なのは、正解を並べることではない。
自分が何を信じ、どこで転び、何を選び直したのかを言葉にすることだ。
あなたが転んだ場所には、同じ場所で困っている人がいる。
その経験を言葉にする。
一人に届ける。
話を聞く。
小さく試す。
商品にする。
喜んでくれる人を増やす。
それが、物語を実業へ変えるということだ。
自分の経験や専門性を、発信や商品へ変える方法を一緒に考えてほしい方へ、30分の個別相談を行っています。
サンキュー(ありがとう)価格の3,900円です。
夢に足りないのは、立派な計画ではない。
夢が実業に変わり始めるのは、誰かが「その話は、私のことです」と振り向いた瞬間だ。





