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AI時代に、なぜ美意識を鍛える必要があるのか
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AI時代に、なぜ美意識を鍛える必要があるのか

『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』から考えた、AI時代に淘汰されない「美しい実業」のつくり方

「司法書士法に反する恐れはある。ただ、完全な違反と決まったわけではない」

当時の僕は、こう考えた。

白とは言えない。

黒とも言い切れない。

グレーだった。

だから、やってみようと思った。

結果、僕は業務停止処分を受けた。

さらに、関わった人間から警察を介して逃げる事態になった。

今なら、最初の違和感で止まる。

当時の僕には、法律の知識とは別の大切なものが足りなかった。

それが「美意識」だったのだと思う。

AIの答えは正しい。なぜか心が動かない

最近、山口周さんの『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』という本を音声で聴いた。

題名だけを見ると、美術館へ通う上流階級の教養話に感じる。

本書が扱っているのは、絵画に詳しくなる方法ではない。

数字や論理だけでは答えが出ない場面で、何を選び、何を捨て、どんな未来を作るかを決める力だ。書籍情報・目次

この話を聴きながら、僕が日頃AIに感じている違和感を思い出した。

AIに記事のタイトルを考えてもらう。

内容には合っている。

日本語も整っている。

間違ってはいない。

それなのに、目が止まらない。

文章も、サムネイルも、企画も同じだ。

目的には沿っている。きれいにまとまっている。あと一歩、何かが足りない。

その一歩とは、予定調和を壊す人間の違和感だ。

以前、僕は知人のうさこ先生との出来事を記事にした。

AIに頼めば、「仲間との信頼」「涙から始まった再出発」といった、意味の通る題名が出てくるだろう。

僕の頭に浮かんだのは、

劇場女と僕

だった。

「劇場女とは何だ?」

「この二人に何が起きた?」

たった五文字で、小さな事件が始まる。

正しい説明や、きれいな言葉を選ぶだけの力ではない。

ただ、そこには僕とうさこ先生が生きている。

これが、美意識なのだと思う。

AIが80点まで整える。

最後の20点に、自分の違和感、欲、ユーモア、失敗、人生を入れる。

そこに「僕が発信する理由」が生まれる。

論理的な正解は、全員を同じ場所へ連れていく

本書が指摘する一つ目の問題は、論理的な正解がコモディティ化することだ。

同じ市場データを、同じ分析方法で、同じ水準の人が見れば、似た答えへ到着する。

AIが加われば、似た企画、似た文章、似た画像は、さらに速く大量に生まれる。

論理は間違いを減らしてくれる。

一方、論理だけでは「なぜ、あなたを選ぶのか」まで作りにくい。

商品の機能や価格はコピーされる。

思想、物語、旗印、生き方は簡単にはコピーされない。

人が英会話にお金を払うのは、教材の動画が欲しいからではない。

外国人と自由に話せる自分になりたいからだ。

人がダイエットへお金を払うのも、カロリー表を手に入れたいからではない。

鏡を見たとき、自分を嫌いにならない生活が欲しいからだ。

人は商品だけを買っていない。

商品によって手に入る、自分の未来を買っている。

その未来を描くのが、プロモーターの仕事だ。

僕は、正しい予定より楽しい寄り道を選ぶ

僕は、合理性だけで人生を決める人間ではない。

今日やるべき仕事が残っている。

酒も飲んだ。

深夜の散歩へ行けば、原稿が間に合わなくなるかもしれない。

楽しいから、散歩へ行ってしまう。

本当はブログを書こうと思っていたのに、仲間と話したくなってライブ配信を始めることもある。

予定通りには進まない。

効率も良くない。

ただ、その寄り道によって「今、生きている」と感じる。

予定を守ることだけが人生の目的なら、AIが作った時間割通りに暮らせばいい。

僕は、好きな人と話し、夜風の中を歩き、面白いと思った方向へ進みたい。

このワクワクは、人生を豊かにしてくれる。

同時に、僕はワクワクによって人生を壊しかけた。

「被害者を救う」という正義と、裏社会への好奇心

僕は過去に、ワンクリック詐欺の被害者を救う法務事務所に関わった。

表向きの旗は、被害者救済だった。

困っている人を助ける。

司法書士として力を使う。

そこだけを見れば、正しい仕事に見える。

一方、僕の中には別の感情もあった。

今まで接したことのない、少し裏社会的な世界への好奇心だ。

危ういからこそ、見てみたい。

知らない世界だから、入ってみたい。

その刺激が勝った。

業務は、電話で依頼者を集め、ビデオ通話で面談して受任する形だった。

本来求められる面談方法や司法書士としての業務範囲との関係で、問題になる恐れがあった。

ここで、当時の法的評価を詳しく論じたいわけではない。

大切なのは、僕自身が最初から危うさを感じていたことだ。

「司法書士法に反する可能性がある」

その認識はあった。

ただ、完全な違反と確定していたわけではない。

画面で顔を見ながら話せるなら、対面と実質的に変わらないのではないか。

全国の被害者を早く救えるなら、新しい仕組みとして試す価値があるのではないか。

僕は、そう考えた。

そして最後は、非常に単純な一言で自分を納得させた。

グレーなところは、やってみよう。

結果、業務停止処分を受けた。

関わった人間との関係も崩れ、警察を介して逃げる事態になった。

人生を壊す大きな選択は、突然目の前へ現れるとは限らない。

最初にあるのは、小さな違和感だ。

僕はその違和感を、好奇心で踏み潰した。

ワクワクには、二種類ある

当時の僕の中には、二つの直感があった。

一つは、

「面白そうだ。知らない世界を見てみたい」

という大きな興奮。

もう一つは、

「この仕事の進め方は、少し美しくない」

という小さな違和感。

声が大きかったのは興奮だった。

聞くべきだったのは、小さな違和感だった。

美意識を鍛えるとは、ワクワクを強くすることではない。

興奮の陰で鳴っている、小さな警報を聞き取れるようになることだ。

深夜散歩へ行くことと、危うい法務実業へ入ることは、どちらも「楽しい方を選ぶ」という言葉で説明できる。

結果はまるで違う。

前者は人生へ余白を戻す。

後者は、自分と周囲の人生を傷つける可能性がある。

ワクワクは、進む方向を教えてくれる。

アクセルとブレーキまで任せてはいけない。

アート・サイエンス・クラフト

ここで、本書の重要な考え方が役に立つ。

実業には、アート、サイエンス、クラフトという三つの力が必要だ。

アートは、何を目指すかを決める。

サイエンスは、本当に成立するかを数字や根拠で確かめる。

クラフトは、経験と実行力によって現実へ落とす。

山口周さん自身も、サイエンスを捨ててアートへ移る話ではなく、三つのバランスを見直すことが重要だと説明している。山口周氏との対談

一言で表すなら、こうなる。

サイエンスは「うまくいくか」を問う。
クラフトは「どう実現するか」を問う。
アートは「そもそも、行う価値があるか」を問う。

ワンクリック詐欺被害者を救う仕事にも、目的はあった。

業務を動かす仕組みもあった。

僕に欠けていたのは、

この仕事の受け方を、司法書士として胸を張って説明できるか。

という問いだった。

法律の線を越えたかどうかだけを見れば、人は線のぎりぎりまで進める。

美意識があれば、線へ到着する前に立ち止まれる。

「儲かるか」より先に、「美しいか」を考えられる。

昔はグレーなら進んだ。今は違和感があれば止まる

現在の僕は、法律、倫理、人間関係の面で違和感を覚えたら、徹底的に調べる。

調べても違和感が消えないものは、基本的に行わない。

違和感は、臆病者のブレーキとは限らない。

過去の経験、目の前の事実、自分が大切にしてきた価値観が、言葉になる前に鳴らしている警報かもしれないからだ。

昔の僕は、グレーなら進んだ。

今の僕は、グレーだと感じたら一度止まる。

ワクワクで未来を選ぶ。

違和感で立ち止まる。

事実を調べてから進む。

これが、失敗から作った僕なりの美意識だ。

AI時代に、人間は何を決めるのか

AIは、正しい文章を作る。

整った画像を作る。

市場を分析し、企画を大量に提案する。

これから、その精度はさらに上がる。

世界経済フォーラムの2025年報告では、分析的思考に加えて、創造的思考、柔軟性、好奇心、リーダーシップなどの重要性が高まるとされている。Future of Jobs Report 2025

AI時代に人間へ残るのは、単なる作業ではない。

  • 何を問うか

  • 何を選ぶか

  • 何を世の中へ出さないか

  • 誰と組むか

  • どんな未来へ人を連れていくか

これらを決めるのが、美意識だ。

僕は、夢を実業に変えるプロモーターを名乗っている。

企画を思いつくことには困らない。

10個、20個、100個と浮かぶ。

AIを使えば、さらに増やせる。

これから必要なのは、企画を増やす力ではない。

数多くの夢の中から、どの夢を現実へ出す価値があるかを選ぶ力だ。

僕が作りたい「美しい実業」

僕にとって美しい実業には、三つの条件がある。

一つ目は、社会に貢献すること。

人や社会が抱える問題を解決し、今より良い未来を作る。

二つ目は、商品を受け取る人だけでなく、渡す側も幸せになること。

顧客だけが得をして、従業員や仲間が疲弊する仕組みは美しくない。

経営者だけが儲かり、現場の人が誇りを失う仕組みも違う。

顧客、仲間、従業員、メンバー、社会。

関わる人たちが、自分の人生を少し好きになれる実業を作りたい。

三つ目は、AIやテクノロジーが進化しても、すぐに淘汰されないこと。

情報だけを渡す商品は、AIに置き換わりやすい。

人の深い悩みを理解し、物語を作り、仲間を集め、信頼関係の中で結果まで伴走する実業は、簡単には消えない。

効率だけを競うのではなく、人間が人間として関わる意味を持つ。

僕が作りたいのは、そんな実業だ。

美意識とは、未来を選ぶ最終決裁権である

美意識は、美術館へ行った回数では決まらない。

高級な服や、洗練されたデザインを選ぶ力とも違う。

迷ったとき、何を選ぶか。

儲かると分かったとき、何を拒むか。

誰も見ていないところで、どんな仕事をするか。

その積み重ねが、美意識になる。

僕はもう、「グレーならやってみよう」とは思わない。

違和感があれば止まり、調べる。

ワクワクだけで突っ走らず、数字と根拠で確かめる。

そして最後は、自分へ問う。

この実業を、自分の名前と顔を出して、胸を張って世の中へ届けられるか。

AIは正解を増やす。

経験は実現力を高める。

美意識は、進む方向を決める。

そしてプロモーターとは、まだ存在しない美しい未来を選び、人と知恵とお金を集め、現実へ連れてくる人である。


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